2022/01/13
歯磨きにまつわるエトセトラ
被せ物や歯が割れる本当の理由
歯の病気というと、虫歯や歯周病が代表的ですが、近頃、現代人に増えていることで問題になっているのが「咬合痛」です。これには食いしばりや上下の歯を持続的に接触させるかみしめ、TCHと呼ばれる癖も含まれます。食いしばりやTCHは、歯に大きな負担を与える良くない習慣です。たかが歯を噛みしめているだけと思うのは大間違い。専門的には歯列接触癖といい、TCHが続くとやがて歯や顎から始まり、体のあちこちにさまざまな悪影響をおよぼすものなのです。
ここで衝撃の事実をお教えしましょう。実は、歯は衝撃に非常に弱いのです。歯の表面の組織であるエナメル質は、人体の中で最も硬いと言われています。しかしこれは陶器やガラスと同じでビッカース硬度が高く表面のひっかき傷には強いのですが、鉄のような粘りのある硬さがありません。そのため、強い衝撃を受けると簡単に割れてしまうもろさがあるのです。歯科医院にはよく、かぶせ物や歯が割れたといって飛び込んでくる患者さんがいますが、こういう人たちの多くは、継続的に歯にじわじわと圧をかけ、緩慢な衝撃を加えていると考えられます。 もともと歯根と歯槽骨の間で両方の組織を繋いでいる歯根膜や、歯の中にある歯髄は長時間の力に弱いものです。歯並びを治す矯正治療はそういう性質を利用し、歯根膜を圧迫したり牽引したりと弱い力を長い時間かけて歯を動かす方法です。ということは、食いしばりなどの強い力でなくても、TCHで持続的に弱い力をかけ続けると歯は移動してしまうわけです。そのうえ、その力が強いものになると歯槽骨は破骨細胞によって過度に吸収が進み、歯周病と同じように歯がぐらぐらしたり、詰め物が取れたりする原因になります。また、歯の神経を興奮させて過敏症を起こすこともあります。さらに、TCHは歯と歯肉の境目に上からの圧力がかかって根元が欠けてくる楔状欠損を生じさせ、これが知覚過敏の原因にもなるのです。被せ物や歯を壊し、知覚過敏などの症状を引き起こす可能性が高いTCHは、日ごろの食事の仕方やちょっとした工夫で防ぐことができます。まずはメカニズムをよく理解し、適切な予防法を実践して歯の健康を守りましょう。
・リラックスした顎の状態
何もしていない無意識化では、上下の歯はほんの少し離れている。
・TCHを起こした顎の状態
顎関節症またはそのおそれのある状態。何もしてないのに上下の歯がふれあい、無意識のうちに過度な緊張が顎関節と歯に負担を与えている。
『一生嚙める元気な歯』参照