2022/01/13
歯磨きにまつわるエトセトラ
ストレスで起こる歯科疾患
歯科疾患の中には、虫歯や歯周病のように食事やブラッシングの不備といった口腔衛生と関わるものとは別に、心の問題がきっかけとなるものがあります。心の問題、つまりストレスが大きな原因となって引き起こされる歯科疾患があることが歯科業界ではよく知られています。しばしば見られるのが、歯の摩耗や知覚過敏といった歯への傷害。そして、顎関節症や開口障害など顎関節への影響、また口内炎や頭痛、めまい、肩こり、歯周病の悪化もストレスとの関連があります。
「心の問題」がなぜ、歯や口の中の疾患にかかわるのかとお思いでしょう?
人はストレスを感じるとそれが脳に伝わり、体が反応するようになっているのです。例えば、不安感や強いストレスにさらされている人は、それに耐えようとするあまり、顎に力が入り、無意識のうちに歯を食いしばったり、睡眠中に歯ぎしりをしたりします。
この噛みしめや食いしばりは、顎や歯に大きな負担をかけるのです。噛みしめの多くは無意識ですから、仕事や勉強に集中している時や寝ている時などに、ギリギリ歯をこすり合わせているということがほとんどです。歯と歯が常に接触している状態なので、歯が必要以上にこすれて表面が摩耗し、エナメル質に目では見えないヒビが入るほか、根元が欠けることもあります。すると冷たいものや熱いもの、甘い、酸っぱいなどの刺激が象牙質から直接、神経に伝わり、痛みを感じる知覚過敏を起こすのです。
また、精神的な抑圧で痛みに過敏になることもあるので、ストレスを取り、噛みしめ癖を改善すると知覚過敏の症状も落ち着くというケースはよく見られます。
さらに食いしばりで強い力がかかることによって歯が欠け、折れる場合もありますし、顎の関節が動かしにくくなり、食事の時に痛むなどの症状がみられる顎関節症を起こす人もいます。顎関節症は若い世代に増えており、ストレス社会の功罪と考えられます。
ストレスを抱えていると日常の細かいところに気が回らなくなって、口の中のケアがおろそかになります。すると体全体の機能にも変調が起こり、免疫力や抵抗力が低下しますし、口の中が乾燥しがちになるので唾液での浄化力が落ち、もともと口の中にいる常在菌が増えやすくなります。これが口内炎の原因になり、歯周病の悪化につながるのです。
知覚過敏や顎関節症、たびたび口内炎を起こすなどの症状に自覚のある人は、まず何がストレス源になっているかをよく考え、ストレスの緩和や解消を心掛けるといいでしょう。
『一生噛める元気な歯』より